まだまだ暑い日が続いておりますね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
伊藤雲峰です。
このところ日展の制作に追われ、部屋にこもりきりの毎日を送っております。
大きな紙を前に、ああでもない、こうでもないと筆を動かすのは、まさに格闘技のようなものです。
一日を終える頃には、心身ともにヘトヘトです。
そんな制作漬けの日々の中、ふと面白い気づきがありました。
毎日、ラジオで韓国語講座を聞くのが私のささやかな日課なのですが、そこで辻野裕紀先生がおっしゃっていた言葉が、心に深く響きました。
それは、「学びとは好奇心だ」という言葉です。
私などは、ついつい言葉を覚えること、つまり「暗記」が勉強だと思いがちです。
先生はそれよりもっと大事なことがあると教えてくれました。
それは、その言葉の構造、つまり「文法」を論理的に理解すること。
そして、日本語と韓国語の違いを見つけて、その違いを「へぇ、面白い!」と興味深く思う心を持ち続けることだというのです。
そうすることで、学びはどんどん広がっていく(単語力も自然とついてくる)のだと言われています。
これを聴いたとき、私は「ああ、書の世界も全く一緒だな」と膝を打ちました。
つい、自分のなかにある得意技をすべて出し切って、それっぽい内容の仕上がりにしがちです。
そんなときに辻野先生の一言をきっかけに、昔の人たちが残した木簡に書かれた筆文字の味わいをじっくりと眺めて、
「この文字はどうしてこんな形をしているんだろう?」
「筆をどう動かしたら、こんなに生き生きとした線が書けるんだろう?」
と、好奇心の灯をともして思索しながら、制作してみようと思いました。
一方で、一つひとつの文字が、まるで個性的な役者のように輝くことも大切ですが、同時に、作品中の40字が一つの画面に集まったとき、それぞれの文字がどう調和し、一つの物語を紡ぐかということを考えることも大事になります。
まるで、舞台の演出家になった気分です。
「主役の一文字をどう際立たせるか」
「脇役の文字が主役を引き立てるにはどう表現したらいいか」
そんなことを頭の中で何十回、何百回とシミュレーションしながら、計画を練り上げます。
いよいよ、筆を握り、紙に向き合う瞬間、これまで積み上げてきた知識や経験を信じ、自分の腕を信じて、一気に書き上げていきます。
この瞬間は、張り詰めた緊張感とともに、まるでスリル満点のジェットコースターに乗っているような気分です。
苦しくもあり、楽しくもある、不思議な時間です。
結果はどうなるかはわかりません。
でも、この「自分の手で生み出す」という営みそのものに、私は何ものにも代えがたい喜びを感じています。
制作者としての醍醐味を、こうして味わわせてもらえていることに、心から感謝するばかりです。★書会のお知らせ★
下記の書会は、下記ページでも紹介しています。
>>>https://itouunpo.com/syokai/
【名古屋】
・2025年9月21日(日曜日)
『第92回 大島屋書会』(名古屋市西区名駅2-20-30)
第一部:13時30分~15時30分
第二部:16時~18時
参加費:2,500円(当日会場にてお支払いください。)
※書道道具の準備は不要です。ソフトドリンク付き。
>>>https://www.facebook.com/PubArco/posts/3352383241462632
【三重県・桑名市】
・2025年10月11日(土曜日)
『第72回 MuGicafe書会』(三重県桑名市京町42)
時間:13時30分~15時30分
参加費:2,500円(当日会場にてお支払いください。)
※書道道具の準備は不要です。ソフトドリンク付き。
・2025年9月27日(土曜日)
『第51回 オンライン書会』(Zoom)
時間:10時~12時
参加費:2,500円(ゆうちょ銀行振込、PayPay)
※筆と墨、半紙や八つ切りもしくは、紙と万年筆やペン、鉛筆など、まずはお手持ちのものでご参加ください。
・2025年9月27日(土曜日)
『第10回 藤丸書院』(リアル+Zoom)
時間:14時~16時
参加費:3,000円(ゆうちょ銀行振込、PayPay)
※レギュラー書会参加者の方は割引制度有。
詳しくは…… https://itouunpo.com/info-kyojyo#kaijyo
★終わりに
日展の制作に加えて、毎年恒例のカレンダー制作も佳境に入ってまいりました。
皆さまに一年間楽しんでいただけるように、今、最後の仕上げをしています。
今回は「結ぶ」というテーマで一年間の暦を制作しています。
各月にどの字をどのような書体で配置するのか、ほぼ確定しました。
最終段階は、誤字脱字がないか、紙面レイアウトに不備がないかなど、トータルでの確認となり、これがまた緊張感満載です。
データ校了は11日なので、それに間に合うように最終チェックを進めているところです。
今年も印刷は韓国で行います。
こうして、日展作品のような大きな舞台での表現と、皆さまの日常に寄り添うカレンダーという、異なる二つの作品に向き合うことで、書が私を大きく支えてくれていることを感じています。
カレンダーの完成に向けて、応援していただけますと幸いです。
季節の変わり目、どうぞご自愛ください。
伊藤雲峰でした。