《No.109》長距離ランナーのように

日曜日の夕方、いかがお過ごしでしょうか。
伊藤雲峰です。

いま、日展の作品制作に集中しているところです。
作っていて感じるのは、作品制作とは、
型を作る(書き込む)→型を崩す(遊びごごろを出す)→型を作る→型を崩す・・・

の繰り返しだなということです。

今自分が面白いと思ったことも、何度も書くと、さほど面白い表現と思えなくなります。
作品の落としどころかと思う表現に行きつくと、ちょっと壊してみたくなります。
こんな繰り返しで、もう1週間ほどに迫った締め切りに、本当に間に合うのだろうかと心配になります。

しかし、無難な表現より思い切った表現のほうが、きっと魅力的な作品になると思うので、
ぎりぎりまで試行錯誤して、作品制作したいと思います。

2週間ほど前に、作品批評をしていただいた先生のお言葉に、

「ここを見て!という線があるとさらに良くなります」と言われました。

作品の見せ場を作る意識がちょっと希薄だったので、

書き込みながら、線に磨きをかけて、見せ場を具体的に作りたいと思います。

かつて今井凌雪先生にも同様のことを教えていただきました。

「自分のこの表現を見てもらいたい、という見せ場を作ってほしいね」
「たいがい、自分の見せ場を人はなかなか評価してくれないけど、そういう姿勢で作品を作りたいね」また、「書作品ぐらいは、演技したいね」と言われたことを思い出します。
「関取が書いた字が、いかにも関取が書いたような力強い表現では面白くないでしょ」
「あの人はこんな表現をするんだという驚きを含んだ見せ場を、一つぐらい作りたいね」
と言われ、はっとさせられたものでした。つい没頭すると、狭い路地裏に入り込んで訳が分からなくなります。
そんな時は、名人の表現を鑑賞したり、近くを散歩したり、昔、先生から聞いた話を思い出して、
気持ちを切り替え、長距離ランナーのようにバランスをとりながら、
自分の身体がしなやかに動かせる演出をしていかねば、と思った次第です。

もう少し、楽しんで進んでまいります!__________________________________________________

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★終わりに★

書も俳句も、「忍耐」の芸術・文藝です。
いつも、バランスをとって事もなげに表現していらっしゃる方も、
実は日ごろから並々ならぬ努力をされているのだと想像いたします

表現するためには、前提となる技術や知識を持ち合わせていないと、どこかで行き詰ってしまいます。俳句についていえば、自分の作品を作るのとは別に、名句を暗記したり、

「自分がどんな俳句を作りたいのか」という自問自答が重要なのだと近ごろ痛感しています。
慣れてくると、小手先で作ってしまい、はじめのうちはそれで何とかなっても、

だんだん表現が形骸化して、つまらないものになります。

藤田湘子先生は

「俳句は自分のために作るもの。それを忘れたら、自分が可哀そうでしょう」

とある本で書かれていたのが、印象的でした。

表現とは、自分自身を映す鏡なんでしょうね。
自分に嘘をついていたら、表現にも嘘をついた自分しかあらわれないので、こんなつまらないことはないですよね。長距離ランナーのように、体調を崩さないよう、バランスをとって表現に向き合いたいと思います。

それでは、皆さんお元気でお過ごしになって下さい。

伊藤雲峰でした。