おはようございます。
気が付けば、明日はもう立夏。

お元気でいらっしゃいますでしょうか。

先週は、家内が所属している会社が主催する舞台公演を観に行ってきました。
脚本は同じ内容ですが、2キャストでのそれぞれの公演を観ることができました。

面白かったのは、同じ役柄を別の人がすると、全く異なる印象となって二倍楽しめるということでした。

たとえば、売れない小説家の役で言えば、作務衣の役者とラフな普段着の役者という違いがありました。
衣装が違うだけで、こんなにも受け取る印象が異なるのかと驚きました。
(私は、作務衣のほうが好きでした。舞台上でたくさんの人が同時にやりとりするとき、すぐにその人がどういう役回りかがわかるからです。)

私はセリフを記憶して破綻なく話せるということだけでも、もう信じられない才能を感じてしまいます。
おそらく、セリフを頭に叩き込んだら、リハーサルで身体にしみこませるように役者同士のやりとりをし、演出家からのアドバイスを受け入れることで、自然と言葉が後からついてくるのかもしれません。
(私だったら、まず覚えることができずに舞い上がって、先に進まないと思います。)

セリフに感情をこめて、観客の心が動くような語り掛けをすることもすごいことだと思います。

小さな声で囁くように話していてもきちんと聞こえてくる声があるということ。
逆に、力強さを演出するためにあえて大きな声を出して、観客に訴えかけることもできるということ。

こんな声量のバリエーションの多さも舞台公演を引き立ててくれる要素なのでしょうね。
(書の表現にも、声量のバリエーションに似た要素があります。たとえば、掠れた弱々しい線なのに存在感があるなど。)

舞台上で多数のキャストがやりとりするなかで、役者間のセリフの間合いのとり方は、観る側としては興味のあるところです。
間合いが早すぎると、話のすじが捉えづらいですが、逆にゆっくり過ぎると、話の内容がぼんやりとしてきて集中できなくなります。
二つの公演を観ることで、自分なりのちょうどいい間のとり方を感じ取ることができました。

役者は言葉ではなく、背中で語ることもできるのだなと思いました。
《不注意な発言で、ある人を傷つけてしまった》主人公は、何も語らず、背中にスポットライトが当てられていました。
《なんて馬鹿なことをしてしまったんだ、情けないことだ》と背中で語っている。

二回観ることができたので、それぞれの役者の方がどんな工夫をしているのかがよくわかって面白かったです。

ちょうど恩田陸さんの『チョコレートコスモス』という演劇をテーマにした小説を読んだところでした。

役者がその役になりきるということはどういうことなのかを考えさせられた小説です。

おかげで、今回の公演舞台も深掘りして観ることができました。

シニアの役者さんがたくさん出られていました。
みなさん、年齢を感じさせない集中力と体力を持たれていて、本当にすごいと感動しました。

私も、自分の世界で頑張ろうと思うのでした!* * * * *
★書会のお知らせ★
下記の書会は、下記ページでも紹介しています。
>>>https://itouunpo.com/syokai/

【名古屋】
・2025年5月18日(日曜日)
『第89回 大島屋書会』(名古屋市西区名駅2-20-30)
第一部:13時30分~15時30分【満席】
第二部:16時~18時 【満席】
参加費:2,500円(当日会場にてお支払いください。)
※書道道具の準備は不要です。ソフトドリンク付き。
>>>https://www.facebook.com/PubArco/posts/3352383241462632

【三重県・桑名市】
・2025年5月10日(土曜日)
『第68回 MuGicafe書会』(三重県桑名市京町42)
時間:13時30分~15時30分 
参加費:2,500円(当日会場にてお支払いください。)
※書道道具の準備は不要です。ソフトドリンク付き。

・2025年5月31日(土曜日) 
『第47回 オンライン書会』(Zoom)
時間:10時~12時
参加費:2,500円(ゆうちょ銀行振込、PayPay)
※筆と墨、半紙や八つ切りもしくは、紙と万年筆やペン、鉛筆など、まずはお手持ちのものでご参加ください。

・2025年5月31日(土曜日) 
『第6回 藤丸書院』(リアル+Zoom)
時間:14時~16時
参加費:3,000円(ゆうちょ銀行振込、PayPay)
 ※レギュラー書会参加者の方は割引制度有。
 詳しくは…… https://itouunpo.com/info-kyojyo#kaijyo

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★終わりに★

昨日、辻村深月『傲慢と善良』という恋愛小説を読み終えました。

前半場面で、主人公の一人・真実(まみ)がストーカーに追いかけられて、結婚相手となる架(かける)に電話で訴えかけたのち、消息不明となります。
詳細は控えますが、恋愛から結婚に向かうまでの真実・架とのやり取りや、その周り(友人や親、家族)が、二人をどう見て何を感じたのかを、きめ細やかに描写しています。

一番印象に残ったのは、真実が架と結婚を決めるまでに、何に悩み何に翻弄されたのかということでした。
私もかつて婚活をしたことがあり、結局いい相手を見つけ出せなかったのですが、その時のなんとも言えない違和感が、この小説に言語化されているところがあり、目から鱗でした。

結婚しようと決意した人は、「結婚相手が、自分を取り巻く人たち(親・親類・友人)の考え方を、どう思い、どう向かい合うことになるのか」に、思いを巡らすことのできる小説です。

いい人であろうとした真実(まみ)は、最後まで自分の内心を押し殺して結婚を決めた後、たまたま出くわした架(かける)の友人からの冗談と悪意の含まれた一言で傷つきます。
その後、彼女が何を考え、どんな行動をするのか。

いつも誰かに決めてもらって、それが一番正しいと思っていた人が、正解が何かわからないにせよ、自分で決めて行動することは≪何かの前進になるかもしれないこと≫を教えてくれた小説でした。
ベストセラーの本なので、読んでいらっしゃる方も多いかもしれませんが、おすすめの一冊です。

それでは、ゴールデンウイークの後半戦。
良い休日をお過ごしください。

伊藤雲峰でした。